シニアマーケット考察:高齢化社会の健康食品開発を考える

  • 2021.02.05

4人に1人、28.4%の高齢化社会

日本の総人口は2019年10月1日の時点で1億2,617万人。そのうち65歳以上の高齢者は3,589万人で、総人口に占める割合(高齢化率)は28.4%。実に「4人に1人は高齢者」という世の中になっています。

しかもこの高齢化率はこの先も上昇し続け、20年後の2040年の高齢化率は37.7%、65歳以上の高齢者は3,920万人に達すると予測されています(「令和2年版高齢社会白書」より)。

一方、総務省「令和元年通信利用動向調査」インターネット利用率の平成30年と令和元年の比較では、60代で7割から9割に、70代で5割から7割以上に増加。さらに、60、70代のスマートフォン利用率も2~3割から令和元年には4~5割と、僅か1年で急激な伸びを示しています。

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高齢者とは

「高齢者」は一般的には「65歳以上の人」と定義されています(厚生労働省 e-ヘルスネットより)。

しかしながら、例えば日本老年学会と日本老年医学会の合同ワーキンググループが、65~74歳では活発な社会活動が可能な人が多いことから75歳以上を高齢者として提案するなど、その定義自体を見直す動きもあります。

高齢者の経済生活について

それでは次に、高齢者の経済生活を見ていきましょう。

多くの高齢者は年金や貯蓄の切り崩しで倹しい生活をしているイメージがありますが、内閣府がまとめた「高齢者白書」によると、実際には「家計にゆとりがある」「ゆとりは無いがそれほど心配ない」と感じている方が74.1%と、多数を占めています。

また、具体的な経済面での不安を問う質問では「医療・介護費用」や「収入・貯蓄が少ないこと」が挙げられるものの、それらを感じる割合は高齢者の中でも若い60歳代が高く、年齢が上がるにしたがって逆に不安は少なくなる傾向にあります。

また、近年の傾向として高齢になっても収入がある(仕事をしている)人の割合が多くなっており、男性の場合は60~64歳の86%、65~69歳の60%、70~74の42%、女性の場合は60~64歳の63%、65~69歳の38%、70~74の36%の人が、何らかの収入がある仕事をしています。

今後、医療費の自己負担額の引き上げなど政策の変化には注意が必要ですが、現時点において高齢者の方々は、経済的に特段の不安がない方が多いのが実態といえるでしょう。

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高齢者の健康について

日本人の平均寿命は2019年時点で男性81.41歳、女性87.45歳。年々延びています(令和2年版厚生労働白書)。

また、支援や介護を必要としない自立した生活ができる期間である「健康寿命」は、2016年時点で男性が72.14歳、女性が74.79歳(令和元年版高齢社会白書)。こちらは平均寿命よりもさらに伸び率が大きく、「アクティブシニア」と呼ばれる活動的な高齢者が増えていることがうかがえます。

更に運動習慣について見てみると、運動習慣のある高齢者の割合(2018年)は65~74歳の層で男性41.8%、女性36.0%、75歳以上の層で男性44.4%、女性37.1%。データから見てもアクティブシニア層が多く存在することが示されています(令和2年版高齢社会白書)。

20~64歳で運動習慣がある人の割合は男性21.6%、女性16.6%と少なく、「若い世代よりも高齢者の方が運動習慣がある」という実態が、うかがい知れます。

一方で介護について見てみると、介護保険制度における「要介護」又は「要支援」認定を受けた人は、2008年は452.4万人、2017年は628.2万人となっており、少しずつですが増加しています(令和2年版高齢社会白書)。

さらに要介護者の主な原因は「認知症」が18.7%と最も多く、次いで、「脳血管疾患(脳卒中)」15.1%、「高齢による衰弱」13.8%、「骨折・転倒」12.5%となっており、高齢者には特有の健康不安があることが浮かび上がってきます。

高齢者の情報収集手段について

私たち通販ビジネスに携わる者にとって、販促のための情報発信と言えばまずインターネット広告やLPが思い浮かびますが、果たして高齢者にとってはどうでしょうか。

総務省の調べでは、高齢者が「情報原として重要視しているメディア」として挙げるのはテレビが93.1%、新聞が80.0%。インターネットは49.3%と、まだ半数以下の割合です(令和元年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書)。

しかしながら、インターネットの普及率そのものは年々増加しており、高齢者の情報収集もインターネットに大きく変化する可能性も考えられます(令和元年通信利用動向調査)。

なお「インターネットで医療・健康に関してどのような情報を得ているか」の調査では、病気について22.6%、病院などの医療機関14.0%、薬の効果や副作用13.6%、などの回答がありましたが、健康食品等に関する情報については現時点では4.1%となっています(令和元年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書)。

今後、インターネットの普及に伴い、この数値がどのように変化していくか楽しみですね。

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高齢者が求める健康食品について

それでは、高齢者向けの商材として、どのようなものが受け入れられるかを考察して行きます。

アクティブな生活をサポートするプロテイン

高齢者はフレイルやサルコペニアといった疾患によりアクティブな生活を送ることができなくなるリスクを抱えています。これらの疾患はタンパク質の摂取不足が直接的な要因となることから、高齢者は1.0g/kg体重/日のタンパク質を摂取することが望ましいとされています(日本人の食事摂取基準2020年版)。

このことから、タンパク質を手軽に摂取できるプロテインや、タンパク質を強化した飲料などに注目が集まっています。

生活習慣病を予防するサプリメント

支援や介護を受ける原因となる脳血管疾患や心疾患は、肥満や高血糖、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病が主な要因となることが分かっています。

機能性表示食品や特定保健用食品には、血糖値や血圧の上昇を抑えるなどの機能をもつ成分を含むものが数多くあり、高齢者の関心も高まっています。

自立した生活・アクティブな生活を支える認知機能対策

支援や介護を受けるもう一つの大きな原因として、認知機能の衰えがあります。健全な認知機能は自立した日常生活をおくるために必要不可欠ですが、高齢者が仕事をして収入を得る、安心してアクティブな活動に足を踏み出すためにも、必要な機能と言えます。

高齢者のアクティブな生活を支えるものとして、認知機能を維持するサプリメントは有用かもしれません。

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高齢者が求める健康食品の売り方について

現状では、高齢者が健康食品の情報収集のためにインターネットを利用する機会は少なく、健康食品の高齢者向けの販促媒体としてインターネットは効率が悪く、広告やLPの内容には工夫が必要と考えられます。

一方で、上で紹介したようにインターネット自体は高齢者にも普及しており、特に裕福な高齢者はインターネットから積極的に情報を収集するという話や、LINEやFacebook などのSNSの利用が増えているというデータもあり、やはりインターネットが高齢者へのアプローチとして重要なメディアである、と考えられます。

また、一般的に高齢者は決まったブランドや商品を買い続けるといった「習慣の重視」が強いと思われがちですが、新商品を見ると買いたくなる「新奇志向」も持ち合わせているという研究結果もあり(鎌田ら、生活科学研究、2012年)、効果的な宣伝で売り方を工夫することで高齢者を新商品の購買に結び付けるチャンスは、十分にあると言えます。

まとめ

いかがだったでしょうか。こうしてデータを紐解くと、高齢者と一括りにするよりも多様な生活を送る実態が垣間見えたのではないでしょうか。高齢者の多くは収入もあり、加齢からくる健康の不安も抱えつつもアクティブな生活を楽しんでおり、インターネットやスマートフォンの利用率も上昇してきていることから、アプローチ次第で通販やEC事業における魅力的な市場であることは、もはや言うまでもありません。

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※1:日本製薬団体連合会ホームページ、医薬品等承認情報に基づき集計。調査期間:2016年1月1日~12月31日(当社調べ)
※2:消費者庁2024年8月15日発表情報より作成【許可取得実績数300件】
※3:消費者庁公開情報の製造受託を主たる業務とする企業の届出情報を基に、届出件数、独自エビデンス数を抽出・集計。(2024年5月31日時点、自社調べ)

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