食品の安全性における代表的な認証規格の種類・特徴を解説

  • 2024.07.24

食品の安全性と品質を確保するために、多くの企業が認証規格を取得しています。代表的な認証規格としては、国が主導するHACCPをはじめ、GFSI(世界食品安全イニシアチブ)によるFSSC22000、一般財団法人食品安全マネジメント協会が運営するJFSなどがあります。

認証を受けることで、企業は自社で製造する商品の安全性を高め、消費者や取引先からの信頼を得やすくなるほか、他社との差別化による競争力の強化が実現します。また、海外でも通用する認証があれば、グローバル市場への展開もしやすいでしょう。

そこで本記事では、食品の安全性に関する代表的な認証規格の種類と、特徴について詳しく解説します。

目次
1.食品の認証規格とは
2.各認証規格の特徴
3.JFSとは
4.ISO規格認証とは
4-1.ISO22000
4-2.ISO09001
5.FSSC22000とは
6.SQFとは
7.HACCPとは
8.GMPとは
9.東洋新薬の品質保証体制
10.まとめ

食品の認証規格とは

食品の安全性に関する認証規格は、大きく2種類に分けられます。

●国が主導する認証
HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)は、食品の安全性を確保するための衛生管理手法です。HACCPは、食品衛生法により義務化されています。

●世界的な認証
世界的な食品の安全性を推進する非政府機関、GFSI(Global Food Safety Initiative)が主導する認証として、FSSC22000やJFSなどがあります。

●認定と認証の違い
認定とは、国際機関が認定機関を精査し、認証はその認定機関が企業を審査することです。ISOの認定機関は各国に一つしかなく、日本ではJAB(公益財団法人日本適合性認定協会)がこれに該当します。

認証機関は審査機関とも呼ばれ、企業のマネジメントシステムが規格に適合しているかを審査します。

企業が認証を受ける手順は、まず自社のシステムやプロセスを整備し、次に認証機関に審査を依頼します。審査が通れば認証が発行され、規格に適合していることが証明されます。認証機関が企業を審査し、認定機関が認証機関を評価するという2段階のプロセスを経て、企業は認証規格を取得します。

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各認証規格の特徴

各認証規格(JFS、ISO22000、ISO9001、FSSC22000、SQF、HACCP、健食GMP)の特徴をまとめると、以下の通りとなります。

下記の表は、横にスクロールできます。

認証規格 特徴(目的) 運営機関 対象業界 認証数(国内)
JFS 日本発の食品安全規格。フードチェーン全体の食品安全確保。 非政府機関(JFSM) 食品製造、流通 2,600
ISO22000 食品安全マネジメントシステム。HACCPとISO9001を融合。 非政府機関(ISO) 食品製造、流通 1,750
ISO9001 品質マネジメントシステム。顧客満足度の向上。 非政府機関(ISO) 全産業 25,925
FSSC22000 ISO22000を基にした食品安全システム。 非政府機関(FSSC財団) 食品製造、流通 3,326
SQF HACCPとGMPを組み合わせた食品安全・品質管理システム。 非政府機関(FMI) 食品製造、流通
HACCP 食品の衛生管理手法。危害要因の分析と管理。 政府(厚生労働省) 食品製造、流通 導入が義務化
健食GMP 製造工程の適正管理。健康食品の品質保証。 日本健康・栄養食品協会と日本健康食品規格協会 健康食品 220工場

※認証数は2024年5月時点

JFSとは

JFS規格(Japan Food Safety Standards)とは、2016年に日本から始まった食品安全に対する認証制度です。一般財団法人食品安全マネジメント協会(JFSM)が運営しており、特にC規格は国際的に通用するレベルとしてGFSI(Global Food Safety Initiative)の承認を受けています。

JFS規格のメリット

  • HACCP制度化に対応できる: 食品事業者がHACCP制度導入に柔軟に対応できます。
  • 日本発の食品規格であり、内容が明確: 国内企業にとって理解しやすく導入しやすい規格です。
  • 第2者監査の効率化: 大手販売チェーンがメーカーを監査する際に役立ちます。
  • 工場ルールの見える化: 現場レベルでの管理が強化され、従業員全体の意識向上が図れます。
  • 段階的なレベルアップが可能: 初めて国際規格を取得する企業でも取り組みやすく、段階的にステップアップできます。
  • 海外取引の拡大: JFS-C規格はグローバルな取引機会の増加に寄与します。

JFS規格は、大企業だけでなく中小企業でも導入しやすい共通基盤を提供しており、現在、認証・適合証明数は2,600件に達しています(2024年6月6日時点)。

参考:https://www.jfsm.or.jp

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ISO規格認証とは

ISOとは、国際標準化機構((International Organization for Standardization)の略称で、国際的な標準となる規格を策定する組織です。

1947年に設立され、スイスのジュネーブに本部を置き、世界の約160の国家標準化団体で構成されています。ISOには約2万の規格があり、大きく分けて「もの」に対する規格と「マネジメントシステム」に対する規格があります。

健康食品に関連する主要なISO規格には、ISO 22000(食品安全マネジメントシステム)と、ISO 9001(品質マネジメントシステム)があります。ISO 22000は食品の安全性を確保するための規格であり、HACCPの原則を基にしています。ISO 9001は、製品やサービスの品質を継続的に改善するための仕組みを提供します。

ISO認証とは、審査機関が対象組織を審査し、規格に合格している状態を認めるもので、認証を受けた企業はその信頼性を高めることができます。

ISO22000

ISO 22000とは、ISO 9001とHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)の2つの概念を融合して開発された食品安全マネジメントシステム規格です。

この規格は、GFSI(Global Food Safety Initiative)の承認を受けており、食品事故の予防とリスク軽減が最大のメリットです。現在、1,750の企業がこの認証を取得しています。

ISO 22000の4要素

  • 相互コミュニケーション: 組織内外での効果的な連絡を保つこと。
  • システムマネジメント: PDCAサイクルに基づいた管理システムの運用。
  • 前提条件プログラム: 基本的な安全衛生条件を維持するための活動。
  • HACCP: 7原則12手順により食品安全を確保すること。

ISO 22000は幅広い業界を対象としており、その対象には食品加工業者や飲食サービス業者はもちろん、食品の流通や販売を行う企業が含まれます。

ISO 22000のメリット

  • 作業効率の改善: 製造工程を整備し、効率を向上させます。
  • 信頼の向上: 取引先や消費者からの信頼を得られ、取引の優位性が高まります。
  • 競合との差別化: 高い安全基準を示すことで競争力を強化します。
  • 監査条件の緩和: 取引先からの監査が効率化されます。
  • 従業員の意識改革: 安全と品質への意識を高め、教育効果を向上させます。

ISO 22000の取得により、企業は食品の安全性を高め、信頼性の向上と市場での競争力強化を図ることができます。

参考:https://www.iso.org/iso-22000-food-safety-management.html

ISO09001

ISO 9001とは、商品やサービスの品質向上を目的とした品質マネジメントシステム規格です。現在、世界における認証数は1,265,216件 (2023年11月13日時点) で、企業が顧客満足度を高めるために重要な役割を果たしています。ISO 9001は、顧客の要求事項を満たしつつ、継続的な業務プロセスの改善を図る仕組みを提供します。

ISO 9001の取得企業は、日本国内では2007年以降減少傾向にあります。これは、ISOの形骸化や文書管理の負担を感じる企業が認証を返上することが原因とされています。日本国内での認証企業総数は、25,925件(2023年12月31日時点)です。

ISO 9001は、特に顧客満足度を改善したい企業に向いています。最大のメリットは、国際規格を満たしている品質であることを顧客に訴求できる点です。

ISO 9001のメリット

  • 企業の安心感・信頼感の醸成: 国際基準を満たすことで、取引先や顧客からの信頼を得やすくなります。
  • 作業手順の明確化: 効率的な作業手順を策定し、業務効率や生産性を向上させます。
  • 従業員教育の効率化: 統一された教育内容により、従業員のモチベーションが向上します。
  • 品質の継続的な改善: PDCAサイクルを活用して、品質の継続的な改善を図ります。
  • 取引先の拡大: ISO 9001認証を取得することで、新たな取引先や市場開拓の機会が広がります。

ISO 9001は、企業が提供する製品やサービスの品質を高め、顧客満足度を向上させるための重要なツールと言えます。一方、食品の安全性と品質に特化したものではありません。

参考:https://www.iso.org/standard/62085.html

FSSC22000とは

FSSC 22000(Food Safety System Certification 22000)とは、ISO 22000を基にした食品安全マネジメントシステムの国際規格であり、GFSI(Global Food Safety Initiative)の承認を受けています。

FSSC 22000は、「食品安全マネジメントシステム(ISO 22000)」「前提条件プログラム(ISO/TS 22002-1またはISO/TS 22002-4)」「追加要求事項」の3つの要素で構成されています。

FSSC 22000を取得することで、食品トラブルを未然に防ぎ、効率的な作業が実現し、国際取引の信頼性も向上します。現在、FSSC 22000の認定組織は世界で35,536社、日本国内で3,326の組織が取得しています( 2024年6月13日時点 )。

FSSC22000のメリット

  • 食品トラブルの予防とリスクの低減: 食品事故を未然に防ぐことができ、消費者や取引先の信頼を得られます。
  • 作業の効率化と業務継承の円滑化: 工程の見える化により、無駄な作業を特定し、効率化が図れます。
  • 継続的な改善による企業価値の向上: 業務改善を続けることで企業価値が向上し、信頼を得られます。
  • 法令順守の推進: 従業員の法令順守意識が高まり、コンプライアンスが強化されます。
  • 海外取引の要件達成: 国際規格の承認により、海外取引の信頼性が向上し、ビジネスチャンスが拡大します。

参考:https://www.fssc.com

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SQFとは

SQF(Safe Quality Food)とは、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)とGMP(Good Manufacturing Practice)の手法を組み合わせて作られた総合的な食品安全マネジメント規格であり、GFSI(Global Food Safety Initiative)の承認を受けています。

SQFは、食品の安全性だけでなく品質管理も含むため、食品業界における信頼性の高い管理システムとして広く認知されています。

SQFプログラムは世界中で実施されており、6大陸で13,000を超える拠点が認定されています。認証拠点は増え続けており、SQFはグローバルな食品安全基準としての地位を確立しています。

ISO 22000やFSSC 22000との違いは、SQFが特定の製品を認証する規格である点です。これにより、製品や製造ライン単位での認証が可能となり、特定の製品に対する安全性と品質を強調することができます。

SQFのメリット

  • 食品安全のコミットメントを実証: 食品事故の予防とリスクの低減に寄与します。
  • 品質管理の向上: 統一された管理基準により、品質の高い食品事業運営が可能になります。
  • コスト削減: 複数の監査にかかるコストや労力を低減できます。
  • 市場での競争力強化: SQFマークを製品に貼付することで、消費者への信頼を高め、取引機会を拡大します 。

SQF認証を取得することで、企業は食品安全と品質に対する高い基準を維持し、グローバル市場での競争力を強化することができます。

参考:https://www.sqfi.com

HACCPとは

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)とは、アメリカのアポロ計画で宇宙食の安全を確保するために発案された、衛生管理手法です。

その後、食品業界で評価され、国際的な衛生管理手法として広まりました。HACCPは、危害要因分析(Hazard Analysis)と重要管理点(Critical Control Point)を組み合わせた手法で、食品の製造過程全体でのリスク管理を目的としています 。

日本では、2020年6月に改正された食品衛生法により、HACCPに基づく衛生管理が義務化されました。2021年6月からは、原則としてすべての食品関連事業者にHACCPの導入が求められています。ただし、HACCPの認証取得自体は義務ではありません 。

HACCP認証の取得により、第三者機関によりHACCP基準を遵守していることを証明できます。

HACCPのメリット

  • 食品安全の向上: 食品の安心安全が確保されます。
  • 従業員の衛生意識の向上: 社員・スタッフの衛生管理に対する意識が高まります。
  • 作業効率の改善: ルールの明確化により教育の平準化が進み、作業効率が向上します。
  • クレーム・事故の減少: 事故を未然に防ぎ、もしもの時の自己防衛ができます。
  • 市場での信頼性向上: 自社の衛生管理のPR力がアップし、取引先や販路の拡大が期待できます。

参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/

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GMPとは

GMP(Good Manufacturing Practice、適正製造規範)とは、製品の安全性と品質を確保するための基準です。原材料の受け入れから製造、出荷に至るまでの全工程において、適正な製造管理と品質管理を求めています。

元々は医薬品の品質管理を目的として導入されましたが、現在では食品、化粧品、健康食品などにも適用されています。このため「医薬品GMP」「化粧品GMP」「食添GMP」「健康食品GMP」のように対象を示して表記されます。

・医薬品GMP
「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(GMP省令)」にて定められています。

・化粧品GMP
ISO22716として国際規格化されたものを日本化粧品工業連合会が自主基準として採用しています。

・食添GMP
日本食品添加物協会が定めた自主基準です。

・健康食品GMP(健食GMP)
厚生労働省から、「錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に係る基本的考え方について」及び「錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン 」として通知されています。日本健康・栄養食品協会と日本健康食品規格協会が認証しています。

健康食品においてGMP(健康食品GMP)が必要とされる理由は、特に錠剤やカプセル状のものが製造過程で濃縮や混合などの作業を行うため、製品中に含まれる成分量にばらつきが出たり、汚染により有害物質が混入したりする可能性があるからです。この問題を未然に防ぐため、健康食品 GMP(健食GMP)が導入されています。国際的にもGMPの義務化や自発的な取り組みが推進されています。

健康食品GMP取得企業数は186社220工場(2024年2月28日時点/日本健康・栄養食品協会、日本健康食品規格協会合計)です。また、GMP製品マークの登録は新規16件、辞退12件で、全体の認証数は4件増加し134件となっています。

健康食品GMP(健食GMP)のメリット

  • 顧客や販売店からの信頼獲得: GMP認定工場で製造された製品にはGMP製品マークが表示でき、安全と衛生面に配慮して作られていることをアピールできます。
  • 競合との差別化: 日本のGMP認定工場で製造されていることが競合との差別化要因となります。
  • 製造の一貫性と品質の確保: 製造工程全体の管理が厳格に行われるため、製品の品質が一定に保たれます。
  • 法令遵守の表明 : GMP認証は法令遵守の表明となり、信頼性が向上します。


GMPは、製品の安全性と品質を確保するための重要な基準です。

2024年5月31日、政府は機能性表示食品制度に関する今後の対応方針を決定、公表しました。この中で、機能性表示食品のうち、サプリメント形状の製品についてはGMP(適正製造規範)に基づく製造・品質管理を要件化することも示されました。機能性表示食品の信頼性を高めるためです。また、トクホについても、同様の方針が示されています。このように、健康食品の信頼性(安全性・品質保証)を高めるGMPの必要性は今後ますます高まってくるものと考えられます。

参考:
https://www.jhnfa.org/gmp-0.html
http://www.jihfs.jp/gmpn01.html
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/benikouji/dai2/taiou.pdf

東洋新薬の品質保証体制

東洋新薬は、高い品質と安全性を確保するために厳格な品質保証体制を整えています。健康食品においては、健康食品GMP(公益財団法人 日本健康・栄養食品協会)適合認定に加えて、特に取得が難しいと言われるNSF-GMPを取得しており、これは米国における栄養補助食品の認証機関であるNSFインターナショナルが承認するGMPです。

原料選定時には、食品原料は22項目、食品添加物は14項目の安全性項目をチェックしています。商品設計時には28項目の安全性項目をチェックし、製造時には打錠品は製造ロット毎に14項目、顆粒品は製造日毎に11項目の安全性項目を検査しています( 2024年6月時点 、一部例外あり)。

工場では作業環境、製造設備、作業員管理について208項目の安全性と衛生管理項目をチェックしています。

製品は以下いずれかの認証を取得した工場で製造されています(一部商品を除く)。

  • NSF-GMP認証工場:安全性と品質の423項目に合格。
  • 健食GMP認証工場:品質項目100項目に合格。
  • FSSC22000認証工場:食品安全性66項目に合格。

安全性に懸念が認識された場合や依頼があった場合には、12,758種類の微生物を最短24時間(菌種により72時間)以内に同定できる設備で微生物検査を行います。

このように、東洋新薬は徹底した管理体制と認証制度を通じて、高品質かつ安全な製品の提供に努めています。

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まとめ

いかがでしょうか。認証規格の取得は、食品の安全性と品質を保証し、市場での競争力を強化するために重要です。

HACCPやGFSIが主導する認証を通じて、企業は国際基準を満たし、信頼性を高めることができます。各認証規格の特性を理解し、自社に最適な規格を選ぶことが、持続可能なビジネスの鍵となります。

東洋新薬では業界トップクラスの各種認証を取得しています。健康食品・サプリメントの安全性、品質管理に関してお悩みの際は、ぜひお気軽に東洋新薬までお問い合わせください。

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※1:日本製薬団体連合会ホームページ、医薬品等承認情報に基づき集計。調査期間:2016年1月1日~12月31日(当社調べ)
※2:消費者庁2024年8月15日発表情報より作成【許可取得実績数300件】
※3:消費者庁公開情報の製造受託を主たる業務とする企業の届出情報を基に、届出件数、独自エビデンス数を抽出・集計。(2024年5月31日時点、自社調べ)

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