機能性表示食品の研究レビューを解説。届出資料作成上のポイント

  • 2021.03.19
機能性表示食品 研究レビュー

機能性表示食品の届出資料は難しい内容構成で、非常に分かりにくいものでしょう。そこで今回は、研究レビューでどのように採用文献の質評価を行っているのか、を解説します。一歩進んだ機能性表示食品の届出資料の見方ができるかもしれません。

目次
1.機能性表示食品の研究レビューの構成
2.機能性表示食品の研究レビュー:別紙様式(Ⅴ)-11の構成
2-1.別紙様式(Ⅴ)-11の全体像
2-2.別紙様式(Ⅴ)-11のページ①の左上
3.別紙様式(Ⅴ)-11における文献の質評価の内容
3-1.【①選択バイアス】
3-2.【②③盲検性バイアス】
3-3.【④症例減少バイアス】
3-4.【⑤選択的アウトカム報告】
3-5.【⑥その他バイアス】
3-6.【⑦まとめ】
4.各文献の質と研究レビューの結論の確認
5.まとめ

機能性表示食品の研究レビューの構成

機能性表示食品の届出における機能性は、最終製品の臨床試験あるいは研究レビューによって評価されます。届出の内訳は、約9割が研究レビューによるとされます。

機能性表示食品に使用する研究レビューは、下記の構成になっています。

(Ⅴ)-4:研究レビューの内容や届出表示に関する説明資料(全体のまとめ)
(Ⅴ)-5:文献検索結果
(Ⅴ)-6:文献検索から採用文献選択までのフローチャート
(Ⅴ)-7:採用文献リスト
(Ⅴ)-8:除外文献リスト
(Ⅴ)-9:未報告研究リスト
(Ⅴ)-10:参考文献リスト
(Ⅴ)-11,12:各論文の質評価シート
(Ⅴ)-13:エビデンス総体の質評価シート
(Ⅴ)-14,15:サマリーシート
(Ⅴ)-16:研究レビューと届出表示の関連性についての評価シート

この中で、研究レビューを構成している採用文献の質を評価しているのは、別紙様式(Ⅴ)-11になります。今回の記事では主に、この資料の見方について説明していきます。

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機能性表示食品の研究レビュー:別紙様式(Ⅴ)-11の構成

別紙様式(Ⅴ)-11の全体像

下記は弊社届出の機能性表示食品「大麦若葉の繊維青汁T(整腸訴求)」の別紙様式(Ⅴ)-11です。
こちらの内容を例に、別紙様式(Ⅴ)-11の中身を見てみましょう。

まずは全体像を示します、文字が小さくて読みにくいですが、後半で説明しますので眺めるだけで構いません。

※消費者庁の機能性表示食品データベースから同じ内容を確認できます。
下記URLの53・54・55ページ目を参照
https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc06/youshiki5?yousiki5216File=E686%255CE686_youshiki5.pdf

別紙様式(Ⅴ)-11のページ①の左上

ここでは機能性表示食品の届出表示と、このページで評価されている研究レビューの対象者やアウトカムなどが記載されています。

今回の例ですと、『健常者に、大麦若葉由来食物繊維を摂取させると、プラセボ(偽薬)摂取と比較して、排便回数が増加するか』を評価していることがわかります。

この下に、3ページ目の中盤まで続く大きな表があります。ここが詳しく文献の内容を評価している部分で、別紙様式(Ⅴ)-11のメインとなります。

右と左で大きく2つに内容が分かれており、左側は「各文献の質を採点する欄」、右側は「各文献の結果を記載する欄」となっています。今回は採用文献が4報あるというのもあり、比較的ボリュームがあります。

また、ページ③の下部にも表があります。ここはコメント欄的な扱いで、上の表の文献の質評価で減点した理由などを記載する欄となっています。

ここまでが別紙様式(Ⅴ)-11の大まかな構成の説明でした。
続いて、文献の質評価を行っている左の表について、詳しく見ていきましょう。

別紙様式(Ⅴ)-11における文献の質評価の内容

別紙様式(Ⅴ)-11のうち、左側の表の「バイアスリスク」の欄が、主に各文献の質評価を行っている部分になります。バイアスリスクとは「研究の手法や実施の限界などによって、研究の結果にバイアス(偏り)を与えている可能性」のことで、文献毎の質の比較のためには、個々の文献のバイアスリスクを種類ごとに比較する必要があります。

実際にどういう内容が評価されているのか、確認してみましょう。

【①選択バイアス】

ここでは「ランダム化」と「割付けの隠蔵(いんぞう)」の2項目を主に評価します。

①-1:ランダム化
プラセボ対照の臨床試験を行うときには、被験者をプラセボ摂取の群と効果のある試験食を摂取する群に群分けします(これを割付けと言います)。この際、意図的な割付けが行われないように、ランダムに割付けが行われているかを、この項目で評価します。

①-2:割付けの隠蔵
割付けの情報は、被験者や試験実施者(試験を運営する臨床試験機関など)に隠して管理する必要があります。一般的に被験者だけに割付けの情報を伏せた試験を「一重盲検」、試験実施者にも伏せた試験を「二重盲検」と言います。本項目では、割付けの情報をきちんと隠すべき人たちに隠して管理されていたか、を評価します。

今回の場合、採用文献3と4では、ランダム化の記載や盲検性の記述が文献中になかったことから、減点がされています。すなわちこの観点では、採用文献1や2の方が、質が高いと言えます。

【②③盲検性バイアス】

試験内容と照らし合わせ、十分な盲検性が確保されているか(試験食がプラセボなのかどうかわからないようになっているか)を確認する項目です。②の項目で試験参加者に対する盲検性、③の項目で試験実施者に対する盲検性を評価します。

今回の場合、①-2:割付けの隠蔵と同じく、採用文献3と4で、必要な記載が論文中になかったとして減点されています。ここからも採用文献1と2の方が、質が高いと言えそうです。

【④症例減少バイアス】

ここでは例数の減少に起因するバイアスを評価します。

具体的には、試験期間中に顕著な脱落者が発生した場合や、脱落者の数が摂取群ごとに不均衡であった場合に生じるバイアスリスクを評価します。他にも解析方法の種類によって、本バイアスリスクの度合いは変わってきます。

今回の場合、統計解析手法の観点から採用文献2と3について減点がされています。

【⑤選択的アウトカム報告】

ここでは恣意的に良い結果だけを報告していることによって発生するバイアスを評価します。例えば肯定的な結果しか論文に掲載していない可能性が高い場合などは、この項目で減点を行います。

【⑥その他バイアス】

その他考えられるバイアスがあればここで評価を行います。

今回の場合、採用文献3が論文著者所属機関の社員であり、潜在的なバイアスがあるとして減点がされています。

【⑦まとめ】

①~⑥までの内容をもとに、バイアスリスク全体の評価をここで行います。

今回の場合、採用文献3と4で減点事項が多かったことから、採用文献1と2と比べてバイアスリスクが高いと評価しています。

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各文献の質と研究レビューの結論の確認

様式(Ⅴ)-11を確認したところ、採用文献の質は、採用文献1≒2>3≒4であることがわかりました。採用文献1と2では、両方とも群間有意差が得られており、肯定的な結果であると言えます。

これらの結果を踏まえて本研究レビューでは、採用文献2の摂取量(2.1g/日)で、大麦若葉由来食物繊維が便通改善作用を発揮すると結論づけています。実際には、試験の規模や非直接性など、他のファクターも考慮した上で結論を出していますが、文献の質評価の結果と結論を単純に比較してみたところ、大きな矛盾はなかったことがわかりました。

まとめ

いかがでしょうか。今回は機能性表示食品の届出に使用する研究レビューについて、実際の研究レビューを用いて解説を行ってみました。

バイアスリスクを正しく評価できていない研究レビューは事後チェック指針の中でもNG例として挙げられています。皆様も機能性表示食品の届出に使用する研究レビューについて、自己点検してみてはいかがでしょうか?

<出典>
・機能性表示食品の届出等に関するガイドライン
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/assets/foods_with_function_claims_230929_0002.pdf
・機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/pdf/about_foods_with_fu
nction_claims_200324_0003.pdf

・機能性表示食品の届出情報検索 E686 大麦若葉の繊維青汁T 別紙様式Ⅴ
https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc06/youshiki5?yousiki5216File=E686%255CE686_youshiki5.pdf

>関連情報:健康食品・サプリメントOEMサービス

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※1:日本製薬団体連合会ホームページ、医薬品等承認情報に基づき集計。調査期間:2016年1月1日~12月31日(当社調べ)
※2:消費者庁2023年1月20日発表情報より作成【許可取得実績数300件】
※3:消費者庁公開情報の製造受託を主たる業務とする企業の届出情報を基に、届出件数、独自エビデンス数を抽出・集計。(2022年8月31日時点、自社調べ)

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