「ジャムウ」とは?古代インドネシア発祥の伝統医療薬の魅力に迫る
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- 2021.09.13
「ジャムウ」とは何か、ご存じでしょうか?ジャムウは、古代インドネシア発祥の伝統医療薬のことで、「インドネシア版アーユルヴェーダ」とも呼ばれています。本記事では、近年注目が高まってきている「ジャムウ」の魅力に迫ります。
- 目次
- 1.ジャムウとは?
- 2.ジャムウの歴史
- 2-1.ジャムウの語源
- 2-2.古代遺跡から見るジャムウの歴史
- 2-3.書物から見るジャムウの歴史
- 3.ジャムウの原材料
- 4.ジャムウの種類
- 5.まとめ
ジャムウとは?
ジャムウとは、古代インドネシアから伝わる伝統医療薬のことで、一般的に「インドネシア版アーユルヴェーダ」とも呼ばれます。基本的には根茎、木の皮、果実や種子、葉っぱや、蜂蜜、ローヤルゼリーなど自然由来の素材が用いられ、これらの原料をすりつぶしジュース状にして飲む、外用のペースト薬として塗るなどして利用されます。その用途は、風邪の治癒・疲労回復・高血圧対策などさまざまです。
インドネシアのジャワ島やバリ島などでは人々の生活の一部に取り込まれており、今でもジャムウ・ゲンドンと呼ばれるジャムウの行商(主に女性の方)の姿を見ることができます。現地ジャムウの大きな特徴としては、基本的にそのレシピは世襲制かつ口伝で、お客から症状や病気を聞き取り、記憶している処方情報をもとに、その場で調合して渡してくれることが挙げられます。
ジャムウ・ゲンドンの方たちは、お客様に応じてその場で調合してくれますが、工場で大量生産されるようになり始めたのは20世紀初頭で、ジャムウの長い歴史からすると、かなり最近のことになります。
日本における知名度は、同じような伝統医薬品のアーユルヴェーダに比べてかなり低く、Googleの検索回数を比較してもそれが見て取れます(下図)。これにはレシピが口伝である、ということも影響しているかもしれません。
Google Trendsにてアーユルヴェーダとジャムウの検索インタレストを調査(21/6/11)
(グラフ上の最高値を基準として検索インタレストを相対的に表したもの)
赤:アーユルヴェーダ 青:ジャムウ
ジャムウの歴史
ジャムウの語源
ジャムウ(Jamu)は、ジャワ語およびインドネシア語で共に、①客をもてなす ②植物の根や葉などから作られた薬 という意味があります。その語源については諸説ありますが、古代ジャワ語で薬を意味するジャムピ(Jampi)やウサダ(usada)がその語源と言われています。
古代遺跡から見るジャムウの歴史
ジャムウの歴史は1,000年以上前まで遡り、古代遺跡の中でもその姿が確認できます。チャンディ・ボロブドゥール遺跡はジャワ島中部に紀元後800年頃に建造された遺跡ですが、その壁面には、当時ジャムウを調合していた女性の姿が見られます。当時はドゥクンと呼ばれる専門技術を持った者が多くいました。そのドゥクン達が、ヒンドゥー教の思想から見出した、つまり古代インドのアーユルヴェーダから派生した治療薬が、ジャムウの起源と呼ばれています。
事実、ドゥクン達が扱っていたウサダ(ジャムウの前身となるもの)には、病の原因や治療法をヒンドゥー教の3大神(ヴィシュヌ、ブラフマー、シヴァ)に分けて考える思想があり、これはアーユルヴェーダにも認められる思想です。また、前述のチャンディ・ボロブドゥール遺跡は、ヒンドゥー・ジャワ美術の象徴的遺品と言われています。遺跡の壁画にジャムウを扱う人が登場しているということから、当時ジャムウが人々にとって非常に重要な意味を持っていたと考えられます。
書物から見るジャムウの歴史
インドネシアの王家の図書館には「スラ・プリムボン・ジャムピ・ジャウィ(Serat Primbon Djampi Djawi)」という、全6巻にも及ぶジャムウの処方集があります。この書物は17~18世紀頃に編纂されたものと考えられており、日本語で「ジャワ・ジャムウの特効の書」と訳すことができます。
この書物にはほとんどの病気の治療薬が記されており、王家の中でもジャムウが病気の治療に使われていたと推測できます。一説にはやがて王家のジャムウがオノギリという村の村長に伝えられ、そこから民間のジャムウが伝承されていった、と言われています。
今回の説明では割愛しますが、インドネシアの歴史はイスラム社会への変遷、ヨーロッパ諸国による植民地化、日本による占領など、波乱に満ちたものでした。歴史におけるジャムウの登場は1,000年以上前ですが、そういった歴史的背景を受けて、ジャムウは歴史の表舞台から姿を消した、と言われています。
一方、その中でも王家で書物として記録が残り、人々の間でも口伝で継承されて今に至るというところに、ジャムウの効果の信頼性を見出すことができるようにも思います。
ジャムウの原材料
ジャムウの原材料は主に植物の樹皮や根茎、葉、花、果実です。それ以外にも蜂蜜や鶏卵などの動物(昆虫)由来のものや食塩、みょうばん、石灰が使用されます。代表的な原材料には下記が挙げられます。
・バンウコン(Kaempferia glanga ショウガ科)の根茎
・ウコン(Curcuma longa(domestica) ショウガ科)の根茎
・ウイキョウ(Foeniculum vulgare セリ科)の果実
・アリキシア(Alyxia stellate キョウチクトウ科)の樹皮
・タマリンド(Tamarindus indica マメ科)の果実
・クスリウコン(Curcuma xanthorrhyza ショウガ科)の根茎
この中では「ウコン」は日本人の間でも親しみがありますが、他はあまり聞いたことがない植物ですね。基本的には食品として使用されるものが多いですが、中には日本で医薬品として使われる生薬由来のものもあります。それぞれがどのように配合しているのかが気になるところですが、それは次の機会で紹介したいと思います。
ジャムウの種類
ジャムウには以下のような種類があります。
・飲料タイプのジャムウ
・身体に塗布するタイプのジャムウ
・化粧品・コスメに配合するタイプのジャムウ
・粉末、錠剤、カプセルなど治療目的やサプリメント系のジャムウ
飲料タイプのジャムウは、ジュースやスープなどのドリンクとしてジャムウを摂取するものです。現地の方以外で観光客にとっても手軽なジャムウになります。
身体に塗布するタイプのジャムウは、液体、ペースト状など粒度の大小がありますが、ボディオイルやボディスクラブ、ボディマスクなどの用途で使用します。
配合するタイプはさまざまな化粧品・コスメとして販売されています。日本でも販売事業者が散見されるようになり、消費者の注目が高まっているといえます。
まとめ
いかがだったでしょうか?ジャムウとは何かについて、原材料や歴史とともにご紹介しました。次回は、現地で実際に調合されているレシピや、使用原料の効果に関するエビデンスなど、より商品開発に繋がる内容に焦点を置いて、ご紹介したいと思います。
サプリメントや化粧品・コスメの商品開発のことなら、ぜひ東洋新薬にお問い合わせください。
<参考文献>
・高橋澄子(1988). ジャムゥ インドネシアの伝統的治療薬 歴史と処方の解釈 株式会社平河出版社
・高橋澄子(1996). 世界の伝統医学 インドネシアの伝承治療薬”ジャムゥ”, 医学のあゆみ, 179(7), 471-473
・ノファ・デウィ・スティアブディ(2019). ジャムウの物語 インドネシアに伝わる美と健康の遺産 フレグランスジャーナル社
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