ECサイトのLTVを上げるCRM施策8選!即効性がある具体策を厳選
- 2021.04.09
ECサイトのLTVを上げるCRM施策の重要性は誰もが理解するところでしょう。すぐに効果が出る取り組みもあれば、長期的な取り組みもありますが、今回は即効性があるCRM施策を厳選してご紹介します。
監修:eコマースコンサルティング株式会社 代表取締役 石塚真識
*LTV:ライフタイムバリュー、顧客生涯価値
- 目次
- 1.CRM(顧客関係管理)とは?
- 1-1.CRMの概要
- 1-2.ECサイトにおけるCRM
- 2.ECサイトにCRMを導入するメリット
- 3.ECサイトのCRM施策で効果を生むためのポイント
- 3-1.顧客情報の管理、分析、施策実行の仕組みを構築する
- 3-2.4つのタイミングを制する
- 4.タイミングA:初回購入前後20分以内
- 4-1.施策①転売予防対策を行う
- 4-2.施策②クレジットカードの選択率を引き上げる
- 4-3.施策③カート・チャットbot内でのアップセル・クロスセル
- 4-4.施策④注文完了時にアップセル・クロスセル
- 4-5.施策⑤LINE登録後に即、アップセル・クロスセル
- 5.タイミングB:継続中
- 5-1.施策⑥解約期間のチューニング
- 5-2.参考施策:別送DM
- 6.タイミングC:解約時
- 6-1.施策⑦ホームページやLINEなど「お問い合わせ」の充実
- 6-2.施策⑧解約時カウンセリング
- 7.タイミングD:解約後
- 8.まとめ
CRM(顧客関係管理)とは?
CRMの概要
そもそもCRMとは、「Customer Relationship Management」の略で、顧客関係管理と訳されます。企業が顧客情報を一元管理し、マーケティング、営業などの各社内プロセスで活用・連携して顧客満足度を高めることで、顧客との長期的な関係を築くための戦略やシステムのことを指します。このCRMの目的は、 LTV(顧客生涯価値)という指標で算出される「顧客一人あたりの利益」を最大化することです。
従来は、営業部署などの人員が顧客担当となり、属人的な情報管理や暗黙知によって、その顧客への商品・サービス提供が行われていました。しかし、IT技術の発展によってCRMが登場し、顧客情報の一元管理が可能という有効性が広く認識されるようになり、手法として用いられるようになりました。
ECサイトにおけるCRM
近年の顧客による商品・サービスの購買行動において、ECサイトの活用が増加傾向にあり、その影響でECサイトも増加しています。その結果、新規顧客の獲得が難しくなり、既存顧客のリピーター育成の重要性が高まっています。加えて、顧客のニーズも多様化しているため、顧客ごとに最適な提案が求められており、いずれも大きな課題になっています。そこで、ECサイトにCRMの導入をすることで、その課題を解決する手段の一つになりうるでしょう。
ECサイトにおけるCRMでは、以下のような特徴が挙げられます。
・顧客の閲覧、クリック、購入などの行動履歴に関するデジタルデータを大量に取得できる
・顧客の購買行動を24時間365日追跡可能で、データを即時に収集できる
・自動化された顧客コミュニケーションを行える
ECサイトにCRMを導入するメリット
ECサイトにCRMを導入・活用するメリットとして、以下が挙げられます。
・顧客情報を一元管理し、共有も容易
・顧客のニーズや嗜好を把握しやすくなる
・マーケティング効果を最大化できる
年齢や住所、行動履歴など顧客ごとに詳しい情報を一元管理することができます。これによって、顧客情報へのアクセスや共有も容易になります。
また、その顧客情報の一部である行動履歴によって、顧客の好みや行動パターン、ニーズを理解する一助となるでしょう。これにより、個々の顧客に対して最適な商品・サービスやコミュニケーションを提供することができ、販売機会の増加や顧客満足度の向上が期待できます。結果的にリピート購入となれば、売上の増加に繋がります。
ECサイトのCRM施策で効果を生むためのポイント
顧客情報の管理、分析、施策実行の仕組みを構築する
上述のメリットのような状態を実現する前提として、相応の仕組みを構築する必要があり、以下のようなことが挙げられます。理想はすべてを満たすことですが、社内リソースや優先課題の判断に応じて順次整備していくのが現実的でしょう。
・顧客データの収集
・収集した顧客データを格納、管理するためのシステムとセキュリティ体制
・システムやツールの活用スキル
・顧客データの分析スキル
・分析結果を基にした戦略立案、実行の体制
4つのタイミングを制する
さらに「実行」の部分に焦点を絞り、ECサイトにおけるCRM施策で成果を生み出すためには、特に効果の高い「4つのタイミング」を押さえるとよいでしょう。
A:初回購入前後20分以内
B:定期継続中
C:解約時
D:解約後
本記事では、即効性があるECサイトのCRM施策の紹介として、この4つのタイミングごとに適切な施策を掘り下げて紹介していきます。
タイミングA:初回購入前後20分以内
最も効果が期待できるタイミングです。
たとえば、メルマガの開封率は平均30%程度ですが、注文完了画面の開封率は100%。計算上は3倍のポテンシャルを秘めていると言えます。「鉄は熱いうちに打て」の精神で、初回購入から間を空けずCRM施策を打つことが重要です。
施策①転売予防対策を行う
LTVが下がる原因の1つに、いま大きな問題となっている「転売」があります。いわゆる「転売ヤー」と言われる人たちは、定期購入商品の初回だけ購入したら即解約。その購入商品をメルカリ、ラクマ、楽天、Amazon、Yahoo!ショッピングなどのプラットフォームを通じて転売します。
ある通販会社では、LTVが極端に下がったことで不審に思い、調査すると「転売」による損失額が2,000万円に及んでいたことがわかりました。
具体的な施策内容:この「転売」対策については別記事で詳しく解説予定ですが、転売ヤーを防ぐ入り口対策、転売ヤーの出口をつぶす対策、そして規約を整備することで、LTVが大きく改善します。
施策②クレジットカードの選択率を引き上げる
決済方法に「後払い」と「クレジットカード」を用意している場合、クレジットカードの選択率を上げることがLTVの改善に直結します。独自調査によるデータでは、クレジットカード利用の顧客は、後払いの顧客に対して1.3~2倍、LTVが高いことがわかっています。
では、どのくらいのクレジットカード利用率が標準的かというと、3,000円未満の商品で30~40%、5,000円以上の商品で50~60%程度です。しかし、LP(ランディングページ)のフォームや、チャットbotなど後述の施策を実施すれば、10%ほどクレジットカード利用率を引き上げることが可能です。
具体的な施策内容:インセンティブ付与
クレジットカード利用率を引き上げるには、インセンティブの付与が有効です。
具体的には「クレジット選択なら●00円引き」「カード決済の方には商品Bプレゼント」といった手法です。
ちなみに、「インセンティブがある風」にするだけでも効果があります。決済の選択ボタン周辺に「クレジットカードなら手数料無料!安心安全ポイント還元でオススメ!」といった“マイクロコピー”を掲載するだけでも効果があることが、複数回のABテストにより実証できています。
<マイクロコピーでクレジットカード選択率を高める施策例。チャット内クレカ誘導は、フォームよりもさらに高い誘導効果あり(10%upの事例も)>
後払い手数料を有料にするなど、クレジット以外の決済方法に逆のインセンティブをつける手法も有効です。しかし、この施策は同時にLPのコンバージョンレートが悪化してしまいます。
施策③カート・チャットbot内でのアップセル・クロスセル
「ハンバーガーと一緒にポテトもいかがでしょうか?」そう言われてついポテトも買ってしまったことはありませんか?
顧客が商品をカゴに入れた直後や、チャットボットの入力中はまさにそのタイミングです。ここで「3個まとめ買い定期コース」「半年お約束コース」などの上位プランへアップセルする手法は、LTV改善に極めて有効です。
具体的な施策内容:「まとめ買いで1つ無料」「割引額で実質1つ無料になる」オファーが勝ちパターンです。「いまならワンコイン500円プラスで、●●サプリもついてきます!」なども有効。オファーやクリエイティブ次第ではありますが、30~50%のアップセルに成功する事例も少なくありません。
<各社のチャットボット内のアップセル施策例>
施策④注文完了時にアップセル・クロスセル
注文完了画面も重要な顧客接点です。この顧客接点を「ご注文ありがとうございました」を表示するだけのただの事務的な画面にしておくのは、もったいなさ過ぎます。
具体的な施策内容:注文完了時にクロスセル商品のLPを表示する、同一商品の上位コースのLPを表示するなど、クロスセル・アップセルを狙いましょう。
<各社の確認画面でのアップセル施策例>
この施策の反応率は平均5%程度。しかし、工夫を凝らせば15%近くまで成約率を上げることができます。
クロスセル率が低い、アップセル率が低いとお悩みの通販企業にはぜひ取り組んでいただきたい施策です。ただし、セット定期販売のクロスセルを行うと、その後の継続率が悪化する傾向がありますので、実施後には継続率の注視が必要です。
施策⑤LINE登録後に即、アップセル・クロスセル
顧客がLINE登録を行ってくれたタイミングも、LTVアップのチャンスです。
具体的な施策内容:注文完了画面・注文完了メール等でLINEへの登録を促した後、登録した顧客にLINEから再度、アップセルまたはクロスセルを行う。
<LINE登録時のクロスセル施策例>
前述の方法でアップセルやクロスセルに反応しなかった顧客に対し、再度アプローチできます。LINEの開封率はメルマガのおよそ2倍程度高いので、メルマガで実施した場合よりも高い反応が見込めます。
タイミングB:継続中
定期継続中には、もちろんアップセルの同梱チラシなどを入れることも重要ですが、「引き上げる」というより「続けていただく」ことに注力したいタイミングです。
施策⑥解約期間のチューニング
多くの定期コースでは、「次回発送の7日前まで」の通知ルールを採用しています。
実は、これを数日変えるだけで、LTVの改善が見込めます。
具体的な施策内容:解約可能期間を次回発送の7日前から10日前に変更。
たったこれだけで、継続率が改善します。「顧客の利便性が低下するのではないか?」と懸念されるところですが、数社でABテストを行ったところ、いまのところマイナスの影響は見られていません。
<解約期間を発送7日前から10日前に変更した施策例。継続率2%upの事例あり>
参考施策:別送DM
古くから行われている施策です。近年、アフィリエイトマーケティングなどで商品への期待が極めて高い状態で購入されるエンドユーザーが増えたことで、改めて注目されています。
具体的な施策内容:商品と同時に送る同梱物ではなく、商品とは別に、例えば商品到着後5~7日目にDMを送る。6ヶ月後など長期的に続けた未来のビジュアル、顧客の声、データを見せ、継続する価値を理解していただく。この別送DMを導入しただけで毎回の継続率が20%上がった事例もあります。
タイミングC:解約時
すべてのお客様はやがていつかは解約します。とはいえ、解約をしたい方は必ずしも商品に不満があるのではなく、中には商品価値をうまく理解できていないだけの「継続見込み客」が含まれています。こうした方に正しくカウンセリングを行い、悩みから救ってあげるのもCRMの役割です。
施策⑦ホームページやLINEなど「お問い合わせ」の充実
ある調査によると、「消費者のおよそ3~4割は、解約連絡する前にスマートフォンで検索している」とされます。あなたの会社の商品はスマートフォンで「自社の商品名+解約」などのキーワードで検索すると、どういったページ(情報)が表示されるでしょうか?
具体的な施策内容:「自社の商品名+解約」等のキーワードで表示されるページに対し、LTVを考慮したSEO対策を行っておくと望ましいでしょう。
施策⑧解約時カウンセリング
いわゆる「解約阻止」や「解約抑止」と呼ばれる手法ですが、あえて「継続応援率」と呼びたいと思います。もし、毎回の継続率が70%の商品で10%を継続応援できれば、毎回の継続率は73%。年間の継続回数は10%、回数で0.3回上昇します。
具体的な施策内容:
マイページから解約が可能な場合:解約理由を選択すると、解約理由に応じた画面が表示されるようにする。
電話での解約が可能な場合:「余っている」「効果がない」などの解約理由に応じて、カウンセリングトークを行う。「余っている」場合は商品への不満ではないので「お届けサイクルのスキップ」で、ほぼ対策可能。また、ただトークするだけでなく、
・コスメならテクスチャ違い、サプリなら味違いなどの別商品を用意して、商品スイッチを促す
・オペレーター権限で、独自の割引制度を設定する
といった「武器」を揃えておくと効果的です。
これら施策による継続応援率の目安は、最低10%。高い場合は20%前後です。
タイミングD:解約後
顧客リストは資産です。解約してしまったお客様に関しても、メルマガやSMS、電話(アウトバウンド)で復活や別商品の提案をしたいところです。
一般的には解約から45~90日頃の反応率が高い傾向にあります。定期コースの解約理由や年齢性別によっても反応率が異なりますので、費用対効果が合うタイミングやオファーを見つけたいですね。
まとめ
いかがでしょうか。EC・通販で業績が好調な企業は、CRMの基本が盤石である傾向にあります。顧客情報の管理、分析、施策実行の仕組みの整備が進んでおり、長期的な施策と同時に、今回ご紹介した対策もほぼすべて実施しています。
ただ、当社が支援する通販会社でシミュレーションしたところ、これらのCRM施策を部分的に実施するだけでも、年間売上が数億円プラスになることもありました。あなたの会社に導入できる施策が1つでも見つかれば幸いです。
もちろん、高LTVの大前提は商品の品質であり、商品設計にあります。
LTVの高い商品開発のことなら、ぜひ、東洋新薬にご相談ください。
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